2015/03/19
魔王とモダンタイムスの読み方。伊坂幸太郎のおすすめ作品
筆者は伊坂幸太郎さんの作品が嫌いです。 なぜ嫌いなのかと言えば、読んでいてこちらまで 痛くなってきそうな残忍な描写が多いから。 ですが、嫌いだけれども読んでしまう。 どの作品も時間を忘れて読みいってしまうくらい面白い。 数ある伊坂幸太郎作品の中でもこれはおすすめという作品を紹介させていただきます。
- ラッシュライフ
- 重力ピエロ
五つの物語から構成されている群像劇です。 それぞれが独立した物語だったはずなのに、読み進めていくと色々な場面で繋がっていたことがわかり、 物語の端々に散りばめられた伏線が面白い。 どういうストーリーなのか簡潔に説明できませんが、 誰もが主役にもなり脇役にもなる。世の中とはそういうものだとしみじみ思える作品です。
連続放火事件とその放火場所の近くに書かれた落書きは、何か関係があるのではないか? 主人公の弟は母がレイプされて生まれた子供。しかし、母亡き後も家族は仲良く暮らしています。 とにかく父親が素晴らしい。家族とは?遺伝子とは?重いテーマですが 「楽しそうに生きていれば重力はなくなる」と書かれた一文が印象的な作品。
魔王とモダンタイムス、主な登場人物や時代背景が全く違うこの2作品は連作となります。 この2作品を深く結びつけるのが「安藤商会」という団体。
「安藤商会」とは何か? それは魔王を読めばわかります。
魔王の続編のモダンタイムスではその「安藤商会」は何なのか 調べることにより登場人物が危険な目にあいます。 普通なら魔王→モダンタイムスという順番で読む事をすすめるでしょう。
筆者はあえてその逆のモダンタイムス→魔王の順番で読む事をおすすめします。
なぜなら、「安藤商会」が何か分かってからモダンタイムスを読むよりも 何かわからない方が登場人物の緊迫した気持ちに近いものを感じることができるからです。 そしてもう一つ、魔王が堅苦しい難しい内容だからです。 「安藤商会」とは何なのか知りたいという目的を持って読んだ方が読み進めやすいです。 途中で読むのを挫折する可能性がある人は、ぜひこの順番で読んでください。
- 魔王
- モダンタイムス
自分の思ったことを他人に言わせることができる超能力を持つ安藤。 政治・選挙を舞台に安藤とファシズムの戦いが描かれた作品です。 そして、同時収録されている呼吸は安藤の弟、潤也を中心に 魔王から5年後の世界が描かれています。 伊坂作品にしては珍しい堅苦しい内容の作品です。
魔王から50年後の世界。 世の中はインターネットが普及し便利になっているが、 「検索」することにより、常に人々は監視されている… 拷問場面や暴力場面があり読むに耐えられないことがあるかもしれませんがメッセージ性・内容が濃い面白い作品。 「勇気はあるか?」「実家に忘れてきました。」など、伊坂作品らしいワードが魅力です。
グラスホッパーとマリアビートルの殺し屋シリーズもぜひ読んでもらいたい作品。
伊坂幸太郎さんの作品をすべて読んだわけではありませんが多くの作品を読みました。
その中で残忍な描写がないものはチルドレンです。
「嫌よ嫌よも好きのうち」。 筆者は結局のところ伊坂幸太郎作品が好きなのかもしれません。
nori
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